アショーカ王伝(其の弐)
『アショカ王伝』(法蔵館) より
☆*"゜改悛篇
(4) そんなある日
ある日のこと一人の比丘(出家僧)がこの「楽しい地獄」の前を通りかかり、その美しさにひかれて中にはいってしまいました。ギリカは即座に殺そうとしましたが、比丘は「わたしは覚りの境地を得ようと修行してきました。その目的を果たさないうちは死ねません。一週間待ってください。」とたのんだので、ギリかは一週間待つことにしました。
(5) 比丘の覚り
比丘は一週間、この世の無常について瞑想しつづけ、ついに覚りを得ることができました。そこに、ギリカが「うひひ」と現れて、比丘をにえたぎる湯でみちた大釜の中になげこみました。もう死んだ頃かと中をのぞくと、煮えたぎる湯の中には一本の蓮華がはえ、比丘はその上で涼しげに結跏趺坐をくんでいるではありませんか。
(6) アショーカ王の改悛
驚いたギリカはアショーカ王を呼びに行きました。やってきたアショーカ王に対して比丘はこういいました。「お釈迦様はおまえを転輪王 (武力によらずして世界を平和に治める王) になると預言したのに、おまえは何をしているのか」。これを聞いたアショーカ王は今までの悪業をくいて、それからは覚りの境地を得るために善行を積むことを決心しました。