まりりんに会いたい2!

2000年コミックスーパーシティ報告

(2000年5月4〜5日 in 東京ビックサイト)

 イシハマは体力と気力がないため行列と渋滞がなにより嫌いだ。そのため、世の人が浮かれ歩くゴールデンウイークには閉門蟄居が通例となっている。しかし、まりりんの新刊がでるイベントがあるとあっては、でかけなければならないだろう。で、場所は?、ときたら、なんとえりにえってお台場。ゴールデンウィークのお台場・・・。イシハマの気持ちがドン暗くなったことは言うまでもない。しかし、まりりんのためだ。それに「わたしはもうオタクデビューしたベテランよ、楽勝だわっ」とふるいたちつつ、新橋からゆりかもめにのたのは二時もはるかにまわった時間であった (←関係者の方はこれがどれだけアホなことかもうお分かりですね。)

 案の定ゆりかもめは、大混雑。いつもの入り口は出口のみに用いられ、普段は用いられない広大な地下切符売り場が開放されていた。乗車規制のために先発にはのれずに次発の便にのる。どんどん時間はすぎていく。

 アクアシティだか、フジテレビだか、海浜公園だか、ビーナスフォートだかしらんが、ゆりかもめから見る行楽地は佃煮にしたいくらい人があふれている。人ごみの種類は家族連れとカップルばかり。わたしのような独り者はまずいない。向かいに座った関西方面から来たとおぼしきカップルは窓から人混みを見ただけでゲンナリしており、彼女が「ビーナスフォートぉ〜」とねだっているにもかかわらず、男の方は、「北朝鮮もよ、あの人混みにテポドン落としたら、ムダがないよな」とかいって、もう降りるのをやめて戻る気のようだ。この男の発言を聞きつつ、たぶん、この視界に入る限りの疲れた人たちは、みなが自分以外の他人をこのようにおもっているのだろうな、と思うと、なんだかおかしくなった。日本全国の健康家族やカップルがゴールデンウィークという名の幻想にふりまわされ、結局はストレスためて休日を終わるのだろう。わたしくらいの年寄りになるとストレス解消には人のいないところに行くのが一番であることを知っている。ほっほっほっ。

 やっとのことで、終点より二つ手前のビックサイトに到着。しかし、ビッグサイトに向かう人波はなく、人の流れはみな帰ってくる人ばかり。いやな予感がして走ると、なんとスーパーコミックシティの終了時間三時半(←確認して家をでろよ)!そりゃーみなさんお帰りになりますよ。ああ、会場の大半のサークルは撤収準備にかかっているではないか。イシハマは顔色をかえてまりりんのスペースに走ったのであった (その姿はさながら、激流をさかのぼる鮭のようであったという。何がベテランじゃ。)。やっと、まりりんのスペースMEIWAノート事務局 に到着! 


↑まりりん新刊と売り子さん's。

ああ、よかった、あいていた。まりりんがいるわ、夢にまでみた最新刊だわ、とゆうことで、働き者10』『のんき者3をよろしくね! (タイトルをクリックしてくれたら紹介文にとぶよ! )

しかし、このような時間になってしまっていては、取材もへったくれもあったものではない。仕方ないので撤収作業を見守りつつ、昨年末のコミケでも知り合っていた売り子さんたちにインダビュー。 

まず、同人界に疎いイシハマから見て、一番疑問に思っていたことを伺うことにした。それは、彼女たちが自分たちの書いた作品ではなく、さぎりやセンセのご本のみをいつも売っていることについてである。

 イシハマの頭の中には去年からいくつかの仮説がうずまいていた。その一端を紹介すると、どうも、同人界のイベントはサークル参加が基本のようだ。だから、自分が何か発表したいと思えば既存のサークルに入るしかあるまい。おそらく、サークルの中にはキャリアの長い順にものすごい上下関係があり、売り子を何年か続けてやっと自分の作品の発表が許されるのではないか。うう、すごい世界じゃ。とかいうもの。

 そこで、おそるおそるO森さんに「あの、ご自分の作品ではなくセンセーの作品をお売りになっていらっしゃるのはどんな理由があるのでしょうか」と伺ってみた。すると、

 オトナの雰囲気ただようO森さんいわく「さぎりやセンセーのマンガが好きで、ファンだったんです。それで、売り子を捜してらっしゃるということで志願したんです。」

 ピンクハウスが似合うかわいいおりぼんさんいわく「わたしはもともとモトさんの関係者なんですが、今日は人手が欲しいというので協力してます。」

 腰を痛めてかがめなかったM田さんいわく「自分達では書けないけど、イベント参加する雰囲気って好きだし」とのことで、わたしの想像は大きくはずれていたのでした。彼女たちは、ホントーにこの同人の世界を愛し、楽しむためにそこにいたのでした。行きのゆりかもめの中でもれ聞いた「テポドン」発言とはなんと隔たった世界でしょう。わたしはモーレツに感動しました。わたしの同人に対して抱いていたイメージがまた一つ改まりました。

 この時間ですから、撤収を見学するしかありません。おりぼんさんの後をかるがものようにストーキングしつつ、「ほー、ペリカン便の出張所があるのね、仕事が速いわね、北京の国際郵便局見習えや」とか、その向かいにあるごみ箱にごみを捨てに行った時には「ふーん、パンフやダンボールのリサイクルもやっとるんだ。感心じゃん」とか、明日もイベント参加する人のための荷物預かりの場所があるのを聞いて、「人の集まる場所には自然とルールができる。同人イベントは人類学的にも面白い観察対象だな」とか思う。

 しかし、何と言っても一番印象に残ったのは、ぴんくはうすのおりぼんちゃんがダンボール箱をゲシゲシ足で踏みつぶしているたくましいお姿だったのでした。

 同人界の奧は深い。

* まじかるハウスのオカメマンガ『転院! 転院!また転院!』は、病弱なごろうを育てたわたしには共感できすぎて、涙なくしては読めないものであった。