04年冬コミ・レポート

"オタク戦線異状なし"の巻

(2004年12月28〜30日 in 東京ビックサイト)

 みなさんは気付いているだろうか? 私はこのコミケ・レポートに毎回何らかのテーマを盛り込んでいる。テーマは事前に決めておいて、その線にそって取材する場合と、現場で素材を集めてそれらをテーマに昇華していく場合がある。むろん、後者が王道で、前者の場合はやや邪道がかっている。前者の場合は、うまくいけば取材がサクサクすすむのだが、事前に考えていたテーマが現実と合わないと当然のことながら失敗するからだ。実は、今回前者のパターンで事前にテーマを考えてから取材にのぞんだのであるが、

見事に失敗した。

 私が事前に決めていた取材テーマとは何か? それは独断と偏見により"韓流"である(はい笑って下さい。コミケに詳しい人は私がどれだけアホかわかりますね)。「これだけ世間が騒いでいるのだから、さぞかし多くの創作本、パロディ本、研究本がでているだろう。韓流はおそらく今年限りの季節ものだから、特色もでる」と思いこのようにテーマを設定し、会場に向かうりんかい線の中で、週刊紙の釣り広告の韓流関係の記事や、韓国スターを使ったCMポスターなどをデジカメにしこんだ。そして満を持して会場に到着してスペースを見ると・・・・。

 ないやん韓流! 

ここで自分がいかにこの世界を直視していなかったかに思い至る。確かに創作本はある。しかし女性向け創作本だと、テレビドラマ、アニメの登場人物、ゲームのキャラなどを♂×♂で妄想空想によってカップリングしたホモエロ本ばかりである。では男性向け創作はと言えば、これまた見事にロリ萌え系美少女(童顔で巨乳のアニメキャラ)がもだえまくっているばかり。

 よく考えてみたら、成人した男女の健全な恋愛を扱った古風な韓ドラが、オタクの感性を刺激するはずもなかった。ああ、ここは、表の世の流行廃りとはまったく断絶した、裏文化世界なのである。つい五日前インドネシアで大津波がおきて貴い人命が十万人も失われたが、ここコミケ会場にも、開場直後にはエロ本を求める男達により男津波がおきる。男津波も津波である以上、やはり激しい引き潮の後に訪れる*註。

*註 人気作家のエロ本を確実に手に入れるために、エロ本ハンター達はサークル参加の権利を利用して開場前に会場に入る。彼らは最初のうちは自分のサークルの出店準備を手伝うが、九時半になるとその仕事を投げ出し、人気サークルのエロ本のために自主的に場外に列を作り始める。そのため、開場寸前となると会場内の人数はまばらとなり、それが十時の会場とともに津波となってなだれ込んでくるのである。

 聞けば、今回の男津波は大波小波を含めて午後まで続いたというが、被災地も死傷者もでなかった模様である。平和なことだ。

 どっと疲れがでたので、ペット本のコーナーに癒しを求めに行く。やはり創作本の中では、ペット本がぴかいちである。パロディものと違って完璧なオリジナルだし、自分のお世話しているお鳥様、猫、犬、フェレット、植物などとの生活をマンガにしたり、グッズ(ポストカード、うちわ、ストラップ、ぬいぐるみ、アクセサリーetc.)にしたりして親ばかぶりを競い合っている姿は、ほほえましい限りである。私は今回我が家の飼い猫、餓鬼道(♂)そっくりの猫が登場するお笑いカレンダー(200円 安っ)を買った。これを売っていたのは中年のおじさんで、自分の飼っている二匹の猫をモデルにしたのだという。一つ一つの写真が小さいので、薄目でみればうちの餓鬼道のオリジナルカレンダーに見えて、二倍楽しい。

 さて、お待ちかねのまりりん近況コーナー。

 まりりんは16年間住み慣れたおうちを狭霧家嬢の都合によりお引っ越しした。今回の新刊『引っ越しの王様』(500円)はその間の経緯をマンガにしている。オカメインコは引っ越しのストレスで体をこわすことが多いため、狭霧家嬢はまりりんの引っ越しには人一倍気を遣った。お気に入りの、秘密基地、フリースを随所に配置して、前のおうちでつかっていたスタンドライト、机、本棚はそのまま移動した。すると、間取りが変わったにもかかわらず、まりりんはすぐに新しいお部屋に順応してくつろいでくれたという。

 ごろうもお気に入りの箱やチラシが側にあると精神が安定し、新しい場所でも落ち着いて行動する。今回の狭霧家嬢の場合はそれの大規模な応用編といったところだ。これからお引っ越しを控えている、アナタ、そこのアナタ! 今回の新刊は参考になりますよ。

 また、まりりんのスペースには商業本の『鳥っ子倶楽部』に掲載されたまりりん原稿の総集編『まりまんが』(1000円)も並んだ。鳥っ子倶楽部を全巻もってない方、また、まりりんだけを楽しみたい方にお奨めである。表表紙と裏表紙のまりまんがは書き下ろしだ。ちなみに、今回のまりりん本の表紙はコンピューターグラフィック(フォトショップ)でカラーである。狭霧家嬢は手書きも好きだということなので、これからも続くかどうかわからないが、カラーのまりりんはとても可愛いので手に取ってみて。

 今年一年、ほんまにろくなことがなかった。鳥インフルエンザで罪もない鳥たちが殺され、観測史上初最高の猛暑に台風十個が本土上陸、中越では地震が起き、これで終わりかと思いきや、年内最後の日曜日によりにもよってクリスマス休暇のど真ん中でインドネシアに大地震アーンド大津波がどどーんときた。じつは、私も狭霧家嬢も、今年はプライベートでろくなことがなかった。ので、お互いのとほほな一年について語り合ううち、気がつくと閉場時間である(ていうか、閉場間際にきているんだけど)。そこで、今回はオカメインコの神様に祈りを捧げてしめたいと思う。

 来年はお互いに良いことがありますように。そして、われらがまりりんにも、ごろうにも幸ありますように。このコミケに参加する、世の中の役に立っているんだかいないんだかわからない大量のオタクたちにも幸いがありますように。

 そして世界中のオカメインコと世界中の人々が少しでも苦しまない明日が来ますように。