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チベット仏教って何?


● チベット仏教はかつてラマ教と呼ばれていた

 チベット仏教はむか〜し「ラマ教」と呼ばれていました。先生(ラマ)をたいへんに大事にする宗教という意味ですが、この言葉はあまり勉強をしないマスコミ以外では現在は使われていません。

 なぜなら、ラマ教という言葉にはチベット仏教に対する理解が非常に浅かった時代のべっ視観がまとわりついているし、仏教であるにもかかわらず、仏教という言葉が入っていないため、何か特殊な宗教のようなカンジがするからです。

 しかし、チベット仏教という言葉も、万能ではありません。

 チベット仏教という言葉にはチベットの仏教という限定されたイメージがありますが、実際この言葉によって表現される宗教現象は、中国、モンゴル人、ブリヤート人、満州人、ネパール、ブータンにも広く存在しているからです。

 従って、チベット仏教はラマ教よりゃましっちゅーくらいでしょうか。

● チベット仏教の主なカテゴリー

 チベットはインドのすぐ北に位置することから、 1500年にわたるインド仏教の発展段階をすべて受け入れてきました。

 インドで仏教が滅びてしまった後には、文字通り、 インド仏教はヒマラヤの冷蔵庫に保存されてきたのです。

 インドでサンスクリット語 (古典インド語)のテクストが失われてしまったものも、チベット語に翻訳されているが故に、われわれが手にできるものも多いのです。

 以下はチベット仏教のカテゴリーですが、インド仏教のすべての発展段階がみっちりつまっていることがおわかりかと思います。

 

小乗仏教 (またの名 : 声聞乗・阿毘達磨哲学)

「小乗」とは、自分のみの「輪廻からの解放」(解脱)を求める一群の修行者に対して、大乗の支持者たちが名付けたものです。仏陀の境地 (彼岸)へ向かうための小さな乗り物 (道) という意味です。

【主な学派とその聖典】

 (1) 説一切有部

 (2) 経量部

大乗仏教 (またの名 : 般若乗・菩薩乗)

 小乗仏教とは対照的に、自らの悟りばかりでなく一切の命あるものの輪廻からの解放を目指そうとする人々は、大乗の徒と名乗ります。

 大乗仏教の理想的人間像である「菩薩」は、すでに自らは「仏陀の境地」に達して涅槃に入ることが可能であるにも関わらず、一切の命あるものの苦しみを憐れんで、何度もこの世に生まれおちて、仏としての能力を他者の救済に用います。

【主な学派とその聖典】

(3) 唯識哲学

(4) 中観哲学

(4-1) 中観自立論証派

(4-2) 中観帰謬論証派

(5) 論理学

密教 (またの名 : 秘密真言乗・金剛乗)

 「仏陀の境地」を速やかに達成するための具体的な実践修行を説くのが密教です。

 密教の教えによりますと、ヨーガ行を通じて身体エネルギー(ルン)を、一つの心滴 (ティクレ)にまとめ、その心滴を脊柱線にそって上昇させる技法が仏の境地をもたらすとされます。

【聖典のカテゴリー】

(1)所作タントラ    『蘇悉地経』

(2)行タントラ     『大日経』

(3)瑜伽タントラ    『金剛頂経』

(4)無上瑜伽タントラ

   (a)母タントラ  『ヘーヴァジラタントラ』
             『勝楽タントラ』

   (b)父タントラ  『秘密集会タントラ』

   (c)不二タントラ 『時輪タントラ』

● 日本仏教とはどう違うのか?

 仏教は日本に入ってくるさい、中国や朝鮮半島をへてそれぞれの地で改変されてきたので、純粋なインド仏教とはずい分ちがったカタチになってしまっています (それはそれでいいんですが)。

 ただし、大乗仏教であるという点は共通しており、奉じる経典や論書 (経典の解説書)には共通するものもあります。

 密教の場合は事情がことなります。

 日本ではインド密教のごく初期の時代の経典しか伝わらなかったことに対して、チベットにはインド後期密教も伝わり、それがチベット密教の多くを占めているのです。

 チベットで密教では、悟りを開くための具体的な手段としてあらゆる宗派の最終課程に据えられていますが、日本仏教では、密教の修行は特定の宗派 (天台宗・真言宗) の中でしか行われていません。

 また、目立った違いと言えば、日本仏教はきわめて情緒的ですが、チベット仏教は論理的です。

 チベットの僧院に入門すると、まず、論理学の修得が課せられ、日課のように論争対決をお寺の中庭で行います。

 論理は普遍性を持つため、チベット仏教が、かつてモンゴルや中国で、現在はヨーロッパやアメリカで布教を行うさいにきわめて有効に作用しました(西洋人は理屈っぽいから)。

 言い換えれば、この論理性はチベット仏教が日本で受けない一因でもあります。


  ごろうちゃん:

「チベット仏教思想についてこれ以上詳しく知りたいなら、

 『ダライラマの仏教哲学講義』(大東出版社)の解説部分を見てね !」


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