1959年にダライラマ十四世がインドに亡命して後、チベットは主権を喪失し、中華人民共和国の版図に編入された。
従って、正式にはチベット国旗なるものは存在しないのであるが、チベットの独立をめざし海外で客偶しているチベット人にとって、チベット国旗はまさしくかれらのアイデンティティのよりどころである。
1994年、ダライラマ猊下が成田空港にトランジットした際、一目でも尊顔を拝しようという在日チベット人たちが、猊下が一時滞在するホテルに集まってきた。その中にはチベット女性が日本人と結婚して生んだ子供もたくさんきていて、彼等のポケットゲームに興じている姿は日本人の子供と全く区別がつかなかった。
ホテルの中庭にはホテル側の好意でかかげられたチベットの国旗がはためいており、チベット人の母親たちはその旗を指さして「あれはチベットの旗よ」と、子供達に教え込んでいたのは印象的だった。
この旗の解説をしよう(Bod kyi rgyal dar, Library of Tibetan Works and Archives より)。
まず、真ん中には美しい雪山(カワチェン)によって、「雪山に囲まれた地」との異名を持つチベットの国を象徴している。
虚空に放たれた光線のうち、赤い六本の光線はセ、ム、ドン、トン、ドゥ、ダのチベット民族の起源となった六つの氏族を象徴している。
民族を示す赤い光と空の青さが交錯しているのは、遥か昔から赤の護法尊(ペンデンラモ)と黒の護法尊(マハーカーラ)によって、チベットの宗教的秩序と世俗的秩序が護られていることも象徴している。
昇る太陽が放つ光は、チベットのすべての民が等しく自由と精神的・物質的幸福と繁栄を享受することを象徴している。
一対の獅子は宗教と政治の両方の力をもったチベット政府があらゆるものに完全な勝利をおさめることを象徴している。
獅子が左手でささえている三色の宝石は仏法僧の三つの宝(三宝)を表しており、チベットの民が常に三宝を頭上に拝していることを象徴している。
獅子が右手でささえている大極図のような宝石(nor bu dga' 'khyil)は十善業法(命あるものを殺さない・盗まない・邪な性行為をしない・嘘をつかない・悪口を言わない・人を仲違いさせるような言葉を使わない・言葉を飾らない・執着しない・怒らない。過った哲学を持たない)と十六浄人法(mi chos gtsang ma bcu gnyis)の二つをあらわし、この二つを心髄とした聖俗の法によって、自己を律すべきことを象徴している。この宝石の黄色の縁取りは、精錬された純金をあらわし、純金のような仏陀の教えが無限の時と空間に広がっていくことを象徴している。
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