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この二万アクセスを記念してこの「レジェンド・オブ・ストゥーパ」(仏塔☆伝説) をアップしました (もちろん、映画『レジェンド・オブ・フォール』のパクリです)。みなさん、あいもかわらぬ、気の抜けた世界をお楽しみください。
(* ちなみに、本文中に廃仏王として名前のでてくるランダルマ王は、歴史学的に言えば、廃仏はしてないという説もあります。ですから、これは、あくまでもチベット人の歴史認識ということで。)
(1) シャーンタラクシタの予言
8世紀のチベットで、ティソンデツェン王は、インドからシャーンタラクシタ菩薩を招請して、初の僧院サムエ寺を建立しようとしました。しかし、天魔の障りによって工事は一向にはかどりません (←写真はご存じ、ブリューゲルの名作「バベルの塔」です。)。
その時、シャーンタラクシタは「わたくしの顕教の力ではこの障りは除けません。ウッディヤーナにパドマサンバヴァという密教行者がおります。彼の密教の力こそがこの障りを除くことができましょう。」と言いました。
王が「招請に応じないであろう」というと、シャーンタラクシタは古の因縁を語りだしました。
(2) 前世の誓い
古に、帝釈天の娘が天律を犯した罪で人間界に堕ち、ネパールの鳥飼いの娘デムチョクとして生を受けました。彼女はチャンダーラ種の三人の男 (鳥飼、豚飼、犬飼) と交わって三人の男の子を生みました。三人の男の子は、お金をためて仏塔チャルンカショル (カトマンドゥ郊外にあるボードナートのストゥーパがこれです。鳥飼いの故事にちなんで現在でも鳥年に大祭が行われています。) を建設しました。
この仏塔の覆鉢を置く際に、長男は「この仏塔に覆鉢を据えた力により、王者に生まれるように」、
次男は「密行行者に生まれるように」、
三男は「仏教の礎たる僧に生まれるように」とそれぞれ祈願をたてました。
ところが、この工事の際に土を運んでいた牛は「わたしも仏塔建立に力を貸したのに、私のためには祈願をたててくれなかった。腹がたつから、わたしは来世、仏教を破壊する王となろう」とヨコシマ〜な思いを抱きました
(←写真は仏塔の前で祈願をたてるデムチョクの三人の息子達の姿。中央は鳥飼いを父に持つ長男。次男三男はみたまんまです。)。
(3) パドマサンバヴァのチベット飛来
そう、その三人の兄弟が今や、長男は、あなたティソンデツェン王に、次男は密教行者パドマサンバヴァに、三男は私シャーンタラクシタに生まれたのです。
古の祈願の力がありますから、王よ、あなたはパドマサンバヴァを招請することができましょう」
これを聞いた王はシャーンタラクシタの言うとおりパドマサンバヴァに使をおくりました。パドマサンバヴァはただちにチベットに飛来し、チベットの鬼神を調伏し、サムエ寺を無事に落慶しました。
サムエ寺はチベット初の僧院として、シャーンタラクシタはチベットの顕教の祖として、パドマサンバヴァはチベット密教の祖として現在も賛仰されています
(←写真は真ん中にパドマサンバヴァ、左下の僧形がシャーンタラクシタ、右下の王形がティソンデツェン王を配す三尊像。)。
(4) ランダルマ王の反仏教運動
しかし、みなさんお忘れになってはいけません。チャルンカショル仏塔建立の際、よこしまーな祈願をたてた牛がいました。
この牛もきっちり転生してかたをつけてくれます。
彼はチベット王家に生を受けると、ランダルマ王として即位し、仏教を徹底的に弾圧し、王家を分裂においこみました。
ランダルマのランとは牛を意味します (←当時の廃仏映像が手にはいらないため、中共によるガンデン寺の破壊映像をもって代用させて戴きます。)
ここをもって、ソンツェンガムポ以来栄えていたチベット仏教の伝統は断絶します。ランダルマ王の廃仏を持って終焉する仏教を前伝仏教 (snga dar)、十一世紀に再び栄えだして今にいたる仏教の流れを後伝仏教(phyi dar)といいならわします。
チベット人の歴史認識の中では、仏法を興隆させる人は、ソンツェンガムポ王、ティソンデツェン王などの化身、一方、仏法に仇なす人物はランダルマ王の化身と連想されるようです。
たとえば、清朝最盛期の皇帝乾隆帝はティソンデツェン王の化身と呼ばれ、その娘もティソンデツェン王の娘の転生者として知られていました。ところで、ランダルマ王は今誰に転生したのかな?