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ダライラマ法王秘話 ①

大学僧が死ぬのは簡単には許さない


ロサンテレー先生
↑写真はロサンテレー先生


 70年代、旧社会で学位をとっていた大学僧たちが、次々と寿命を迎え旅立つ時期が来ていた。

1959年の亡国の年にセラ大僧院のチェ学堂の管長をつとめたていたロサン・ワンチュク(1901-1978)師は、1975年頃、大僧院に対して大きな布施をし大きな法要を行いはじめた。異変を察知したダライラマはロサン・ワンチュク師の下を訪問し、

『お前は死ぬ気でいるな。今チベットがどういう状態か分かるか。もう少しこの世に留まって僧院社会の立て直しに協力しろ』と言った。

すると、ロサン・ワンチュクは
「私にはあなた様のように自分の意志で寿命を伸ばす力がありません」と答えると、
ダライラマは「できるかできないかを言ってない。この世に留まるように」と言ったので、ロサン・ワンチュクはその時は死ななかった。

しかし、三年後の1978年にダライラマがヨーロッパに外遊している間のこと、ロサン・ワンチュク師は説法会を行い、その会が終わると同時になくなった。

法王はヨーロッパからセラ大僧院に電話をいれて、ロサン・ワンチュクの訃報を聞くと
「説法会をやっていると聞いて〔すぐには死なないだろうと〕安心して何も言わなかったが、失敗した。もう一言『この世に留まれ』と命じておけば、あと一年はもったはずだ」

このロサンワンチュク先生はギュメの元管長ドルジェタシ師、同じくギュメの元管長ロサン・テレ師(ミスター『入中論』)の師匠であり(二人は兄弟弟子)、この話はロサン・テレ先生から伺ったものである。


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