(大東出版社 定価3800円+税 ISBN:978-4-500-00726-4)
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ツォンカパ(1357-1419)はゲルク派(ダライラマの率いる宗派)の開祖である。
ツォンカパの生き方は今もチベットの僧侶の手本であり、彼のはじめた祀りムンラム(祈願会)はチベット最大の祭りとなっている。ツォンカパの創始した哲学と僧院組織によって、僧侶の教育課程はシステム化し、チベット仏教は大きく発展した。歴代ダライラマの登場とともに、その勢力は満洲人・モンゴル人にも及び、現在は名実ともにチベット仏教の最大宗派である。
本書にはツォンカパの五つの伝記が収録されている。
まず、ツォンカパ自らが生涯を韻文によんだ『わたしの目指したことは素晴らしい』 次が、ツォンカパの直弟子ケドゥプジェが書いた歴史的な伝記『信仰入門』
同じくケドゥプジェの手になるツォンカパの神秘体験を記した『秘密の伝記』
ツォンカパの身辺にはべって数々の不思議を目にしたジャムペルギャムツォによる、別伝が収録されている。
これら四伝は、いずれもツォンカパの在世中に記されたもので、聖書でいうところの福音書である。
最後の伝記は、ツォンカパの人生を描いた十五枚の絵伝とその解説であり、これは全ページカラー。もちろん図内に番号がふられていて解説がついているので、絵解きもできる。
さらに、冒頭には二年ほどまえ、風の旅行社さんが「チベットで学習ツァーを」とおっしゃってくださった時、調子にのって催行した「ツォンカパの聖跡ツァー」でとったウルカやガーワトンなどの聖跡の写真も掲載。
関連する地名をひくための中央チベットの地図もつけたし、索引もつけたし、出す前に見直しもした。手間暇かけただけあって、絵本のようにキレイな仕上がり。
ぜひ手にとってみてください。
本書のみどころは、『信仰入門』の中に述べられる、「ツォンカパの登場によってチベット仏教界がいかに変わったか」について述べる章や、ツォンカパが哲学を完成していくために、文殊との対話や夢の中でのブッダパーリタの祝福などがあったことを示す『秘密の伝記』である。ツォンカパは哲学の研究を終えた後にこそ密教の修行を行うべきことを身を以て示した。それはツォンカパの登場以後、多くのチベットの僧院のならいとなり、結果、チベットの仏教界は刷新され、多くの優秀な僧侶を世に送り出し、チベット仏教の名望はユーラシア大陸全土にひろまった。
現在の日本の宗教シーンはツォンカパ登場以前のチベット仏教界の事情と非常に似ている。もし仏教再生の可能性が少しでも存在するとするならば、このツォンカパの人生と哲学にこそその道を示すものであると思う。