まりりん学(中級編)

さぎりやかおるの『いんこ道』

  まりりんは今年13才。小柄が普通のノーマルオカメの中で、110gの体重と7.5cmのとさかを誇る堂々たる体躯をもつ。かつて小智慧者とよばれたその知能も、いまや中智慧と言っていいほどの進化をみせている。このようなまりりんの健康な肉体と健康な精神はむろん、育ての親であるさぎりや嬢の手柄によるところが大きい。

 わたしも一オカメの育ての親としてよくわかるのだが、まったく異なる種族である人間と暮らすオカメのストレスはなみならぬものがある。もともと、オカメインコは群の鳥である。人に挿し餌で育てられた手乗りの鳥は人間を同類と考える。しかし、人間は彼らを狭いところにとじこめ「仕事だ、遊びだ」とろくにかまってやらない。結果、ストレスから大概の手乗り鳥はそうでない鳥よりも早死にするものである。

 手乗りであるまりりんがこのようにストレスのない自然体でいられるのは、むろん、さぎりや嬢がオカメインコとしてのまりりんの気持ちを理解した上で、彼ののぞむような生活をおくらせ、かつ、そのような生活を危険、すなわち、小さなオカメインコが遭遇しうるあらゆるタイプの事故、からまもる努力をしているからである。

 以下、さぎりやかおるの語る「インコ道」を「インコの本能」編、「人間の義務」編の二つのわけて解説しよう。

(* ちなみに、この文章の文責はすべてイシハマにあります。イシハマによるさぎりや先生論ということで。)



(1) 説得工作 
 インコは群の鳥。本能としてコミニュケーションをとても大切にする。人間の都合でインコに我慢を強いねばならない場合、どうせ分からないだろうから、と説明しないで都合を通すのはインコにとっては多大なストレス。たとえ人間の言葉でも説明すれば、「インコは聞いてないよーで聞いてくれます」(by さぎりや嬢)。たしかに、ごろうもお出かけの格好をしてこんこんと言って聞かせると、追い鳴きしない。たとえ、あさっての方をむいていてもインコが言葉を聞いて理解しているのは確か。

典拠: 「まりりんとその飼い主の失敗」『鳥っ子倶楽部④』pp.82-88
「まりりんとお片づけ」『インコのマーチ』pp.89-91
 
(2) アイコンタクトでインコの気持ちを共有する
 インコのコミニュケーションは言葉だけではない。アイコンタクトも大切である。インコがあなたの目をじっと見つめていることがある。それは、あなたに何かをとってもらいたかったり、ウレシイことを表現したいのだったり、悲しいことを訴えるものであったり様々。インコが目で訴える時には、いつでも目をあわせて内容によって言葉や表情をかえてあげること。そうすれば、インコはあなたとのコミニュケーションを通じて幸せを感じ、あなたにもそれ以上の愛情を返し、幸せを感じさせてくれる。ちなみに、インコの視線の意味を完全に読みとるのにはインコ道をひたすら極めねばならない。
典拠: 『おこりんぼさん、えばりんぼさん』pp.32-33
 

(3) 羽づくろいのお手伝いをする

 コミニュケーションの究極はスキンシップである。群の鳥であるインコはとくにこれが好き。あなたのインコに一羽飼いの寂しさゆえのストレスをカンジさせたくないなら、羽根づくろいのお手伝いをしてあげよう。ポイントは彼らが「なでて欲しい時」をよみとり、彼らが気持ちいいと思う場所、目と鼻の間、後頭部などをかいてあげること。なでてあげる間は人間の方もとても幸せな気持ちになるので、あなたにとってもメリット絶大。
典拠:「まりりん、おしゃれさんへの道」『鳥っ子倶楽部②』pp.83-87
 
(4) 巣作りに協力する
 鳥である以上営巣本能は避けがたいもの。着色されたりビニール加工がされていない箱を、インコの好きそうな場所 (人間が視界に入り、かつ、天井に近い本棚や冷蔵庫の上) に設置してみよう。その箱はかれらのお気に入りの場所になる。中には葉書などをいれておくと、それを巣材にしてふかふかの基地をつくりあげる。うちのごろうもお気に入りの箱を手にしてからは遠吠えがおさまり、体重もすこしずつアップしてきた。やはり本能に従った行動をとらせるのがストレス解消に役立ち、健康の秘訣であるようだ。
典拠: 「暴かれた秘密基地の巻」『インコ倶楽部⑦』
「まりりんの大変」『インコ倶楽部⑨』p.93
「まりりんの日々の生活」『新インコ倶楽部①』pp.84-88
 

(5) 闘う相手になる

 インコでも男の子には強い戦闘本能がある。一羽飼いのインコにとって闘う相手はあなたしかいないのだ。狭霧家嬢いわく「噛まれてやるのも飼い主の仕事」、それで彼らがストレスためずにすむなら、「すっきり」するまで噛ませてあげようとのこと。ぶしゆーっと流血しても、叱るのは論外である。耐えるのだ! (根性のない人はシャープペンのお尻で指を代用しよう。)
典拠: 「勃発! 冬のなわばりウォーズ」『インコ倶楽部⑧』pp.5-11



1.寝るならうつな、うつなら寝るな
 おかめちゃんと一緒にお休みするのはすべてのオカメ飼いの夢である。が、そのためにはクリアせねばならない壁がある。そう、一晩に一度も寝返りをうたないこと。できないやつは一緒に寝るな。「寝返りうつのはバクチをうつより危険」なのだ!
典拠: 「まりりんとその飼い主の失敗」『鳥っ子倶楽部④』p.93
『快哉』pp.85-86
 
2.部屋の中の危険物は即撤去
 机の上にあるペン立て、こんなものでもインコがぶつかれば大けがのもと。身の回りを見回して「潜在的な凶器」を撤去するのじゃ。我が家 (イシハマ) の失敗をあげれば、机の上に芽の出たじゃがいもをのせていて、ごろうが側にいてひやっとしたことがあった。じゃがいもの芽はご存じの通りの猛毒。こういうところにも気を配って。
典拠:「インコ道ひたすら」『インコ倶楽部②』p.85
「まりりんのケガの巧妙」『新鳥っ子倶楽部①』pp.79-94
 
3.化粧をすれば嫌われる
 こゆい色のマニキュアはいんこをびっくりさせる。また、ヘアスプレー、香水などは肩にとまって直接、髪や体にふれるインコには有害。とうぜんしない方がいい。色気はなければない程インコには好かれる。彼氏よりインコこれくらいの気概をもたねばあなたのインコは寿命を全うしない。
典拠: 「まりりんの教育的指導」『鳥っ子倶楽部⑤』pp.79-88
 
4.カーテンをつければ安心
 外に通じる扉にはカーテンをつけ、外にでる時はカーテンと扉の間にはいってから扉をあけること。こうすればあなたの後をおってきたインコがまちがって出てしまうことはない。ちなみに、イシハマ家のカーテンは「逃げないおまじない」にペンギン柄である。
典拠:「インコ道ひたすら」『インコ倶楽部②』pp.77-79
 
5.閃光や音や震動には要注意
 暗闇の中とつぜんのフラッシュライト、騒音、震動はオカメ・パニックのもと。そのような意味で花火はサイアク。ただし、まりりんはもう「漢」なので動じない模様。我が家のごろうも光や音には動じなくなったが、地震はだめ。最近深夜に地震がおきると、頭はねむっているのに体は反射的にとびおきてごろうの部屋にころがりこみ駕篭をチェックするという荒技ができるようになった。すごいことだ。
典拠:「Y2Kとまりりん」『インコ倶楽部⑩』pp.59-60
「まりりんと暑い夏」『鳥っ子倶楽部⑦』p.84
『のんき者1』p.26
 
6.人間の食べ物 (刺激物・味の濃いもの) は絶対ダメ
 きゃべつ、豆類など人間とインコが共通に口にできるものもあるが、調理したもの、中でも刺激物がだめなのは当然。インコのごはんは無味・無刺激が基本。
典拠:「まりりん食卓の風景」『インコ倶楽部④』pp.12-18, pp.91-95
「ちゃれんじゃー・まりりん」『鳥っ子倶楽部⑥』pp.89-91みそ
 
8.インコが駕篭の外にいる時、あなたの役目はストーカー
 インコは暗闇遊びが大好き。紙袋や箱にもぐったりしている間は、でてくるまでその前でストーカーのごとく張り込むのは飼い主のつとめ (鳥をストーキングしても法には触れないゾ)。危険物が一杯の部屋の中でインコを野放しにするのは自殺行為。
典拠:「まりりんな毎日」『鳥っ子倶楽部』p.5-22
「おてまさんまりりん」『鳥っ子倶楽部③』
「まりりん健康へのすすめ」『インコ倶楽部⑥』pp.7-23
 
9.おかしいと思ったら、即お医者
 インコは小さいので体力が落ちるとすぐ落鳥してしまう。具合が悪くなったら、即座に病院につれて行くこと。体力があるうちに投薬すれば助かる率もグンとアップ。前提として、毎朝のうんちチェック食欲チェック、また、小鳥を診られるお医者さん」を行きつけにしておくことなどがあげられよう。
典拠:「1999年のまりりん」『鳥っ子倶楽部⑧』pp.73-87
 
10.後手に扉を閉めるのは外道のしわざ
 インコはいつもあなたの後をおってくる。後手に戸を閉めればインコが戸に挟まれて死ぬという危険が倍増する。事実、イシハマが小学校四年生の時世話していた手乗りのセキセイインコは、母が後手に閉めた戸に挟まれて落命した。生涯の汚点じゃ。戸を閉める時は「小笠原礼法」に従いつつ両膝をついて戸を両手ですすすとお上品にしめること (おのれはやっとんのかそんなこと)
典拠:『快哉』pp.117-118
 
11.裸足で暮らせ
 インコはあなたのことが大好きなので、足下にじゃれついてくる。その結果、人間にふまれて落命するインコは数多い。インコが側にきたらすぐわかるように裸足で暮らすのだ。オカメインコ教の教祖様さぎりや嬢はいつもは・だ・しである
典拠: 「まりりんとその飼い主の失敗」『鳥っ子倶楽部④』pp.90-91
 
12.インコの所在を確認するまでは微動だにするな
 あなたのどデカイ図体は潜在的な凶器である。2番の原則に従えば、まず人間が存在をやめねばならない。やめたくないなら、インコの所在を確認してから手足を動かすことを習慣とするのだ。インコが視界に入っていない時、あなたが動かせるのは目玉だけ。間違っても手足 (尻はもっての他。正座の足を組み替えた結果つぶされて死んだ鳥も数多い) は動かすな。
典拠: 「まりりんとその飼い主の失敗」『鳥っ子倶楽部④』p.84

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