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図説チベット歴史紀行』

(河出書房新社 ISBN4-309-72618-6 定価1800円)


 この本はとにかくきれいなの。写真を提供してくれてるのは写真家の永橋さん。この人とママの出会いは3800Mのインドと中国の国境で行われたダライラマの法要だったので、まさしく、仏縁でできた本。

 ママが言うにはこの本のウリはチベット人が信じるままの歴史を叙述したところだそうです。世界のはじまりから、現代に至るまでチベット人が信じるままの歴史を最初は昔がたりのように、途中からはちみっと客観的になってきて、自分の専門になる17世紀以後は世界最先端のチベット史の研究成果を簡潔にのべてます。また、垂直のベルサイユ、東洋の法王庁と称えられるポタラ宮殿の内部構造を神学的に解説した部分は、これからポタラ宮に行こうという人も、もう行ったという人も、これからも今までもいく気のない人ににとっても、チベット文化の奥深さをよく伝える内容となっています。ここはとくに必読ね。

 

正誤表(ERRATA) *地図は筆者が一度もみないうちに出版されたので、要注意。

(p.5) ズトゥ・プク・ゴンパ → ズンドゥル・プク・ゴンパ

(p.28) ジョカン寺 → トゥルナン寺

(p.56) 赤(在家)の御二方と称されるコンチョクゲルポ (1034-1102) とクンガーニンポ の二人と、白 (僧形) の御三方と称されるソナムツェモ (1142-82) とタクパゲルツェン (1147-1216) とサキャパンディタ (1182-1251) の三人である。→白(在家)の御三方と称されるクンガーニンポ、ソナムツェモ (1142-82) とタクパゲルツェン (1147-1216)の三人と、赤 (僧形) の御に方と称される とサキャパンディタ (1182-1251) とパクパ (1235-1280) の二人である。 

(p.80) 庶子 → 諸子 (p.81) 釈 牟尼 → 釈迦牟尼  (p.94) 観音 薩 → 観音菩薩

(p.65) ダージリン → ガントック 

(p.95)

(p.126) 東方書店 → 東方出版

あと、砂マンダラとか、チベットの祭りとか転生活仏問題とか、コラムも充実しています。

 下の写真はこのうち砂マンダラの解説をした部分だけど、砂マンダラと儀式の有機的な関係がみひらき二頁で理解できるというスグレモノ。チベットの美術は、すべて仏教の儀式や修行の一環として理解されるべきもの、というチベット人にとってはあたりまえ、日本人にはまったく縁遠い考え方が、セキララに示されております。

 *『毎日新聞』はこれを「砂絵」と訳していたが、問題外よ? 


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